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オクト・エキスパンションのストーリーとチャレンジの繋がり、そして乖離 Splatoon2

 
Splatoon2DLC、オクト・エキスパンションについてのネタバレがあります
 

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Splatoon2のオクト・エキスパンション(以下オクト)のEDを迎え、全駅クリアして心の中のヒーローも倒した。
直後の感想は「ストーリーは良かったし面白いチャレンジもあったけどシンプルなTPSミニゲーム集というかSplatoonっぽくないな」という感じだった。
 
Splatoonの魅力は単に敵を退けるために弾を撃つだけでなく床にインクをぶちまけ有利な状況を作る駆け引きのなかで多くの面積を塗ったりオブジェクトをゴールへ持ち込むことだ。
 
はじめから一人用モードとしてある「ヒーローモード」ではチュートリアル、テクニックを実践をしつつその魅力をうまくプラットフォームゲームに昇華させていた。
 
しかしオクトはインクを際限なく床や壁に塗ることのできないステージが多い。
ミッションの条件のなかにインク回復ができない、足場が全て壊れる木箱、塗る場所のないレール上での的当てなど従来のSplatoonの楽しみ方からすれば窮屈といえる。
 
 
しかしオクトの考察を巡っていくうちにこの任務の条件設定に蓋然性があることが浮かび上がった。
 
それはネル社の目的とする主体性なき存在「ネリモノ」を作り上げる材料を見分けるのに適したステージだということだ。ネル社の目的については以下のブログの記事が特に詳しく考察されている。
 
 
"物語後半、タコである8号とイカであるアタリメ司令がミキサーにかけられネリモノに加工されそうになるシーンに違和感を感じ多人も多いのではないでしょうか。デンワ(タルタル総帥)はイカとタコを区別せず、混ぜ合わせネリモノに加工しようとします。イカとタコを区別しない 、それは 一見それはヒメとイイダが至った境地と同じように感じられますが、決定的に違うことがあります。それはイカとタコ、お互いの種族、個性、そして存在を尊重するという考え方がネリモノにはないということです。「ネリモノ」とは8号が憧れ目指したハイカラスクエア、イカ世界、つまり 『Splatoon』の考え方とは対極に存在するモノです。"
 
約束の地が何なのかを具体的に言わなくとも、過酷なチャレンジをこなし、正体もわからぬ「アレ」を集め、挙げ句ホイホイとミキサーに入っていく優秀なネリモノの材料を集めるのがネル社の狙いだ。

チャレンジの内容を考察

チャレンジの内容もただ難しいものだけではない。的を正確に狙い、インクをギリギリ節約し、ボールを落とさないよう慎重に撃つという技術を求められる。

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絶望の光景

ヒーローモードのように単純にゴールへ向かうものもあるが少なくともチャレンジの達成条件に多くインクを塗るものはないし、ガチホコガチヤグラのチャレンジはあってもガチエリアのチャレンジはない。

(もしかしたら敵AIが8号を倒す、エリアを塗るで動作を分けるのが開発において難しかったからといった理由も考えられるが)
8号がチャレンジでナワバリを主張する必要はないし敵は消毒されたタコなので主張する相手もいない。
 

しかしそんな状況から脱するべく地上を目指しタコ由来のブキであるスプラッシュボムとオクトシューターを道中手に入れ、ネルス像を塗りつぶしタルタル総帥の野望を打ち砕くこととなる。

 
EDを迎えた後、ただタコのアバターがアンロックされるだけではなく自由を手にした「8号自身」が地上でナワバリバトルに興じることとなる。
 
 
本題が遅れて申し訳ないがこの物語と従来のSplatoonのコンセプトが互いに相反しているという点はどうすれば解決できたのだろうか。
 
一つの案としてこれまでのヒーローモードなどとは違うことを誰かに語らせる方法が思いつく。あらかじめミッションの内容について「より強く正確にチャレンジをこなせるものが約束の地へ行ける」といった導入をデンワかナマコ車掌に言わせるなどの工夫があれば印象が変わったかもしれない。あるいは元チャレンジャーだったグソクのおじさんにチャレンジ内容や主体性についてなにか語ってもらうのも手だろうか。
 
Splatoon2の新要素である「サーモンラン」は塗ったインクをものともせずイカたちに襲いかかるシャケを倒して金イクラを集めるCOOPだ。こちらのインクを塗ることで相手を不利に出来ないので駆け引きは薄いがいかにも怪しいバイトの雰囲気やイカの捕食者たるシャケの正気と思えない表情によって違和感をなくすことに成功している。
ただオクトは反Splatoon的思想をテーマにしているだけあって非常に難しい。
 

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カーラヒョ湖駅で動画のアップを勧める描写や公式Twitterで隠し要素を明かすなどオクトの楽しみ方について広げる手立ては行われている。

断っておくと私はプレイ体験をとおしたストーリー展開に感激しているからこそストーリーとコンセプトの乖離をもったいなく思っている。それについて提起したくて記事を書いた次第だ。

 
もしかしたら深海メトロのなかにおいてそれは果たせなくても8号にハイカスクウェアでの生活を楽しませることが一つのナラティブとして乖離を縮めてくれるのかもしれない。