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Butterfly Affection 考察:アゲハはなぜ強引な子なのか?なぜ話さないのか?

「Butterfly Affection ~蠱惑の幼虫~」(以下BA)はエロゲの公開から先立って健全版として無料で公開されたADVだ。
Win(64bit)およびMACでプレイできる。
作者は「奴隷との生活 -Teaching Feeling-」の Ray-K氏だ。今回はヒロイン、アゲハの行動原理というか強引さや妙な点について考察したい。プレイ時間は15分もあれば一通り見終わるボリュームなので本記事はぜひプレイしてから読んでいただきたい。
 
 
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以下ネタバレ 
 
 
 
 
 
 
 

本作のキモはヒロインと主人公の一方的な愛のぶつけ合いにあると考えている。
ヒロイン、アゲハは成長するにつれ勝手に食事をつくる、刺して動けなくした状態でキスをするなど合意を取らずに行動を起こすことが多い。

極めつけは アゲハに見せずに書いていたノートに突然書かれた「愛して」と書き込むことだ。秘密にしていたノートに書き加えるという行為は合意をとる能力持っていながらあえてそれを避けているやっているということ、そしていままで避けていたことをわざわざアピールしてきた。
 
彼女はなぜこのような行動をとるのだろうか。
アゲハちゃんはえっちな子だからつい強引になっちゃうのだろうか。 
その線も捨てがたいがこの強引さには主人公の行動にヒントがあると考えている。

 そもそも主人公の行動が一方的

序盤の流れを思い出してみよう。
・主人公は弱っているかもしれないという予想で異形を拾う。
・本当に必要な処置か絶対の答えがないまま温水と石鹸で洗ったりする。
・食事や寝床を与えるのみならず頭を撫で、言葉まで覚えさせようとした。
・道具の扱いを学習するものの表情や仕草の変化がないままそれをつづけた。 

当然どれも主人公がアゲハに合意をとらずに行ってきた行動だ。
もしかしたら石鹸が合わずに死んだりする可能性もあるし、食事が合わずに中毒を起こす可能性もあった。
アゲハから見て主人公はかなりリスキーな行動をとっているといえるだろう。

さらに一種の実験もあって撫でたりもしているが 何の感情表現もないアゲハに対して継続してその相手をするのはかなり異質なものだろう。

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ろくに反応もないと知って撫で続ける主人公もかなり問題アリ。
 
自分と違う生き物を拉致して教育させるというのはアゲハの立場で考えてみれば主人公もかなり一方的な愛を注いでいる。アゲハは食事を与えていてもスキンシップなどを行わないと脚が成長し始めたあたりで脱走する点から彼女は家の外で生きていく能力がある可能性は十分にある。

逆に言えば彼女は生きていけるかとは別問題に主人公の一方的な行動を肯定的に受け入れたといえる。 
 
やがてアゲハは手足が人間のそれに近くなり、食事を作る、身を寄せる、ついに主人公を刺して無理やりキスをするなど立場が逆転してしまう。
さらにいつでも一日が終了を選べたはずなのに 特定の日付では アゲハからの食事とスキンシップを受けなければ勝手に終了できなくなくなってしまう。

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また作者であるRay-K氏は以下のような発言もしている。
 「Feed」は動物などに対するエサやりを意味する言葉だ。
アゲハから主人公への食事もまた「エサやり」のままだということだ。
つまり自分に向けられた一方的な愛をアゲハもまた一方的な愛で投げ返したということだ。
 

あくまで「一方的」を望むアゲハ

最後にアゲハに見せずに書いていたノートに突然書かれた「愛して」をみた主人公がアゲハの存在を認めるかどうかで分岐する。
 
アゲハを受け入れればHappyEnd A。お互いに笑顔のままで終わり。
認めなければHappyEnd B。主人公はアゲハに刺されて目が覚めると、これまでのアゲハに対する考えを改めて不自然に猛省する。 
 
興味深いのはHappyEnd Bだ。アゲハは刺す直後に悲しいような呆れたような表情をする。
ほぼ洗脳とも言えるような能力を持っているように見えるが初めからこの毒を使わなかったということは主人公の愛を尊重したかったということかもしれない。
あるいは「愛して」のと書く通りあくまで受け身の存在でありたかったということも考えられる。

いずれにしても主人公が注いだ形の愛をアゲハが理解している以上は無責任なままには終われないのだ。 
それは犬に顔を舐められるという程度では済まなかったのだ。

まさしく人が虫や爬虫類に対する愛を人に向けるというのを問うゲームだと言える。おそらくその後も二人は話し合うことなく愛のドッジボールを繰り返しているだろうと思われる。 

本作は小粒ながらも興味深いテーマを取り扱ったADVと言えるだろう。
特に奴隷との生活で伝家の宝刀とも言える「撫でる」の表現を大きく変えている点が素晴らしい。
この時点で完結しているものの、大変えっちになるであろう有料版公開など今後の内容にも期待したい。