ゲームブンセキ

ゲームの感想、分析、そしてリスペクト

ゲームは面白すぎて困る。だからレビューを書く

あるとき、ふっと「そろそろゲームレビューを書き始めて1年たつな…」
と気づいた。そのとき振り返って思った。なぜゲームレビューを読むのか。
 
何気なく読んでいるゲームレビュー。
 
これから遊ぶゲームの購入基準にするという目的で見ることは多いと思う。
でも「ネタバレあり」と書かれた批評についてはどうだろうか?プレイしたあとにレビューを見るというのはどういうことか。
ゲームレビューを読んだからといって一度遊んだゲームの評価が自分の中でかわることはそう多くない。それにそのすべてが必ずしも真を捉えたレビューとも限らない。
じゃあなんでゲームレビューを見るのか。
 
 
思うにゲームは、面白すぎて困る。
 

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近年のゲーマーの嬉しい悲鳴のイメージ図
 
ゲームは短いもので数時間、長いと数百時間に及ぶ娯楽だ。
何億も投じた映画は2時間ほどで観終わるし
全13話のアニメを見終わるのだって7時間もしないうちに終わる。
ゲームはセーブができてしまうばかりに日付を超えてどこまでも遊べるボリュームになってしまった。
 
いや、セーブができないファミコン、アーケード時代のゲームだって何度も繰り返し遊べるように目に見えない工夫、難易度の調節にあふれている。
 
 
それにたくさんのゲームが出ている。
Steamで2018年にリリースされたゲームは約9300本にも及ぶという。一年は365日しかないはずなのに、毎日25本くらいゲームが出ているということだ。
スーパーに毎日通ってもそんなに品揃えが変わるかよ。
 
そのどれもが注目を浴びるわけではないが上を見れば質もヤバくなってる。
2018年のThe Game Awardsのノミネートが、激シブのRDR2、シリーズ初のオープンワールドMHW、アメコミ原作と侮れないMarvel's Spider‑Man、毎年出続けるアサクリオデッセイ、インディーの刺客Celeste、めでたく受賞したGoW
 
苛烈なGOTY競争を考えれば質も量もどんどんあがってとどまることを知らない。
2019年もDMC5やSEKIROを待ってる間に突如APEX LEGENDSを公開するとかもう目が回る。
 
そんななか自分の中に響いた珠玉の一本終わらせて
「あーおもしろかった」
だけで済まない気にもなるというものだ。
 
何時間も遊んだ気持ちをたった一言で済ませられるはずもない。
それだけ時間をかけたら何も感じないほうが不自然なくらいだ。
いや時間だけの問題でもない。こころに響いた音楽だろうと絵画だろうと一言で言い表せて済むならむしろ作品にする意義は薄いだろう。
 
素晴らしい、ゆえにもどかしい。
どうにももどかしい気持ちを解消すべくネットを見る。
 
他の誰かはどう思っているのか。
孤独と呼ぶには大げさだけど、心のスキマがたしかにできる。
そのソワソワした気持ちを抑えるためにゲームレビューを読む。
その時自分の感情を代弁してくれたら?
よかったところに共感できたら?
気づかなかった面白さの根拠を見つけてくれたら?
 
ようやくその気持ちが成仏する。
 
よく「語彙力のたりないオタク」としてひたすら「尊い…」「最高かよ」だけになってしまうことを恥じる様子がTwitterに散見されるが、
そもそも面白いものを言葉にまとめること自体、
まあまあ難しいことだ。自分でやってみてよくわかった。
 
でも同時に楽しいことでもある。
自分の気持ちに整理するためにいっそ自分でレビューを書いたほうが確実だし、
マイナーなものだとそもそもレビューをだれも書いていないことだってある。
自分でレビューを書いているうちに「そういやアレ、良かったわ」と思い返すこともよくある。
ゲームの面白さは油断すればプレイした自分でも気づかないうちに過ぎ去っている。
 
 
ゲームは、面白すぎて困る。
 
 
もはや画面から受けた気持ちから溢れ出るほどに。
余すところなく全てを楽しむなんてもはや無理なほどに。
だからゲームレビューを読む。
これからもゲームレビューを書く。

VR ChaH:ねこます、のらきゃっと量産型のモデルが出演するエロゲ。かわいいの在り方を問う。

VR ChaHはみここ(ねこます)、のらきゃっと量産型などのアバターとバーチャル世界で致すエロゲである。


無料でPCから遊べる。当然R-18だ。

kokoromati.booth.pm

オートセーブでギャラリー機能もないのでもし気になる場面に出くわしたらスクショしよう。 

 

主人公はごく普通の大学生。
VRCという仮想空間でみここ(ねこます)の3Dモデルのアバターを動かし会話などを楽しんでいたところ、手違いがおこって秘密裏にやらしいサービスを行うユーザーと事に及んでしまう。


誤解は解けたがその後もumix2というユーザーとデートすることとなる。

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バーチャルでウキウキするのもつかの間、彼にも無味乾燥な一人暮らしの現実が待っている。


食費は日に日に減っていき、家賃も必要になる。
バイトと仕送りで所持金を維持できるが、VRを存分に楽しむために高額なVR機器を購入する。
さらにモデリングの勉強のため、参考書を買うので現実の食事にあてる金はVRの沼へと沈んでいく。

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15万の貯金に7.3万のダメージ。逐一表示される所持金の表示が痛々しい。

バイトを黙々とこなし、友人との話題もすっかりVRC一色なってしまうほど染まっていく。

やたらと食事の描写が多い割に惣菜パン、レトルトカレー、あり物料理という質素さだ。


しかしそれは彼にとってバーチャル世界では何物にも代えがたい日々の糧になっていることの証左でもあった。


新たなコミュニティ、VRならではの遊び、友人とのオタク話、そしてumix2との行為。
手を変え品を変えアバターを変えてプレイを行うumix2はエンターテイナー気質でもある。VRCのごっこ遊びを遺憾なく発揮して事に及ぶのである。

 

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umix2と親しくなってゆくが同時に陰りのある表情も見せるようになる。

核心になってしまうので深くは書けないが、かわいく振る舞うとはどういうことか。
理想の姿が変わったときそれまでの理想と自分をうまく認められるかに切り込んでいる。
本作はバーチャルにかぎらず会社や恋人、家族といったそれぞれのコミュニティで誰しも抱える可能性のある興味深い問いを美少女が投げかけているのだ。

 

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個人的にはPBK45氏のコミュニティにおける話をもう少し聞いてみたかった。

TETRIS 99:狩りのように凶悪なパズル。テトリスなのに。

テトリス99はオンラインで一度に99人遊べるという「バトロワをとってつけた感」を思わせるが実際にプレイしたら大きく印象が変わった。


対戦式のテトリスはもとより、ぷよぷよなどパズルゲームにおける攻撃は多くの場合は自分以外全員に行っている。

しかしこのゲームは99人の中から一人を狙うことができる。
そして狙われていることがわかるので殺意の緊張感を味わえるのだ。

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この「殺意」は対戦パズルにおいても新鮮であり、このゲームのキモでもある。
そして殺意はバッチシステムによって更に加速していく。以下で詳細に説明しよう。

俺より弱ったヤツに会いに行く

テトリス99で相手をKOするとそのお邪魔の攻撃力が増加するバッチがもらえる。
とすればセオリーとしてKOを狙うためにピンチに陥っている人を見極めて攻撃することになる。
親切にも、誰を攻撃するかを自動で選択する機能があり、弱っている人を狙う「とどめうち」が実装されている。
同じ弱っている人でも持ちこたえそうな人と、スキマだらけでもう耐えられそうにない人で分かれてくるので確実に仕留められる人を手動で指名することでよりKOしやすくなる。

迷ったら「とどめうち」の連続選択でどの人がピンチかすばやく探すこともできる。

 

弱った相手を見極め倒したとき思わず下劣な笑みがでることうけあいだ。

 群がるハイエナに負けるな

問題は逆に自分がピンチに陥った場合だ。
当然ながら他の人がバッチを狙いにKOしにくる。
狙われているときはその相手から線が見えるのでどれほどの殺意を向けられているかがわかる。

そんなとき「カウンター」という作戦を選ぶと指名してきた相手全員に攻撃できる。

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更に狙われているほど攻撃力が上がるので、まさにピンチをチャンスに変える作戦なのだ。送られてきたお邪魔ミノは一列に並んで溝が空いていることが多いので棒型のミノをストックしていれば一気に巻き返せる。

 

カウンターでピンチ脱すれば「とどめうち」狙いの人がいなくなる。
ついでにKOまでとれれば気分は最高だ。
もっとも、自分で積んだミノがガタガタで処理できない場合は諦めるしかないが…

 

そしてゲームが進むにつれミノさばきとバッチの攻撃力を加味した競争に勝ったものがテトリス1として優勝する。
試合を最後まで観戦すると上位の人は相手の首とも言えるバッチがたくさん集まっていることが伺えるだろう。
考えなしにコツコツと積んでいていも全く上位にいけないばかりかいつの間にか高く積み上がって「とどめうち」の対象にされてしまう。

 

このテトリス99は内職的なパズルではなく殺意を持って殺意を制するゲームだ。


冒頭で述べたが従来のテトリス対戦や他の対戦パズルの攻撃対象は全員なので自然とパズル要素とおじゃまの対応がうまい人が勝つ仕組みだった。
しかしテトリス99は攻撃する相手が不利なら複雑なテクニックなしでも相手を倒せる。
FPSなどのバトロワで銃を向けるのは戦場でうっかり出会ってしまったから身を守るべく戦う。
しかしテトリス99は獅子がウサギを捕食してバッチを血肉にすべく狙うのである。

狩るか狩られるか。弱った相手を横取りするか。サバンナの世界のような駆け引きをテトリス99で体感しよう。

 

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ところでハイエナって横取りもするけど普通に狩りをするのも上手いらしいよ。

 

脱出ゲーム『やばたにえん』 :必ず丸ノコから君を助ける。次の周でな!

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今回紹介する「やばたにえん」はiOSAndroidで無料公開されている脱出ゲームだ。

やばたにえん

やばたにえん

  • takeshi nagahara
  • ゲーム
  • 無料

play.google.com


拘束され、絶体絶命のピンチにある女の子を助けたり見殺しにしながら謎の館からの脱出を試みるゲームである。
操作は非常に簡単。アイテムを探し、対応するギミックを見つけて動かすだけ。


途中で詰まってもプレゼント箱をタップすると5秒でスキップできる動画広告を見たのち、簡易なヒントが出る。
またプレイヤーの知識に依存する謎かけもほぼないなど非常にテンポよく遊べる工夫がされている。

 

死亡は成功の元?

本作が面白いのは囚われている女の子もテンポよく死んでいくところだ。
どの女の子も放置している分には死なないがプレイヤーが間違った手順を踏むとあっさり死んでしまう。
あまりにサクサク死んでしまうものだからかえって「やってしまったものはしょうがない」と諦めがつく。


多くの脱出ゲームやパズルゲームは解法がわからなければずっと足踏みすることになるが、本作はEDへと向かうために必要な工程を踏んでいれば一周できる。
むしろ一通り終わってからのほうが女の子の助け方に気づくギミックも多い。


このゲームは例えていうなら、試験でわからないところを飛ばして一度すべて終わらせてから残りを解くような構造になっている。おかげで非常に小気味よくプレイできるのが魅力だ。


一度クリアしたあともきちんと全員助けるにはどうすべきか、興味をもたせる導線としてのEDはどれも素晴らしい。


ただしインベントリが4つ、オートセーブのみなので手順がわかっていてもミスしたときは最初からやり直ししなければいけないのが気になる点だ。
一周目は一度全て終わらせたほうがテンポを崩さないので手動セーブがないほうがいいが二周目以降は手動セーブがあっても良かったかもしれない。

 ※2019/02/07のアップデートで任意セーブができるようになっていました。

 

ともあれ 女の子が多様なピンチにさらされている「趣味の良さ」には感服した。
一発ネタっぽいタイトルとは裏腹に救出方法、失敗ともによく考えられている。
かわいそうな女の子を助けたい人も助けたくない人もオススメできるゲームだ。

 

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個人的にはこのシチュエーションを見ながら「いや~シブいなあ~」と一人唸っていた。

Butterfly Affection 考察:アゲハはなぜ強引な子なのか?なぜ話さないのか?

「Butterfly Affection ~蠱惑の幼虫~」(以下BA)はエロゲの公開から先立って健全版として無料で公開されたADVだ。
Win(64bit)およびMACでプレイできる。
作者は「奴隷との生活 -Teaching Feeling-」の Ray-K氏だ。今回はヒロイン、アゲハの行動原理というか強引さや妙な点について考察したい。プレイ時間は15分もあれば一通り見終わるボリュームなので本記事はぜひプレイしてから読んでいただきたい。
 
 
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以下ネタバレ 
 
 
 
 
 
 
 

本作のキモはヒロインと主人公の一方的な愛のぶつけ合いにあると考えている。
ヒロイン、アゲハは成長するにつれ勝手に食事をつくる、刺して動けなくした状態でキスをするなど合意を取らずに行動を起こすことが多い。

極めつけは アゲハに見せずに書いていたノートに突然書かれた「愛して」と書き込むことだ。秘密にしていたノートに書き加えるという行為は合意をとる能力持っていながらあえてそれを避けているやっているということ、そしていままで避けていたことをわざわざアピールしてきた。
 
彼女はなぜこのような行動をとるのだろうか。
アゲハちゃんはえっちな子だからつい強引になっちゃうのだろうか。 
その線も捨てがたいがこの強引さには主人公の行動にヒントがあると考えている。

 そもそも主人公の行動が一方的

序盤の流れを思い出してみよう。
・主人公は弱っているかもしれないという予想で異形を拾う。
・本当に必要な処置か絶対の答えがないまま温水と石鹸で洗ったりする。
・食事や寝床を与えるのみならず頭を撫で、言葉まで覚えさせようとした。
・道具の扱いを学習するものの表情や仕草の変化がないままそれをつづけた。 

当然どれも主人公がアゲハに合意をとらずに行ってきた行動だ。
もしかしたら石鹸が合わずに死んだりする可能性もあるし、食事が合わずに中毒を起こす可能性もあった。
アゲハから見て主人公はかなりリスキーな行動をとっているといえるだろう。

さらに一種の実験もあって撫でたりもしているが 何の感情表現もないアゲハに対して継続してその相手をするのはかなり異質なものだろう。

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ろくに反応もないと知って撫で続ける主人公もかなり問題アリ。
 
自分と違う生き物を拉致して教育させるというのはアゲハの立場で考えてみれば主人公もかなり一方的な愛を注いでいる。アゲハは食事を与えていてもスキンシップなどを行わないと脚が成長し始めたあたりで脱走する点から彼女は家の外で生きていく能力がある可能性は十分にある。

逆に言えば彼女は生きていけるかとは別問題に主人公の一方的な行動を肯定的に受け入れたといえる。 
 
やがてアゲハは手足が人間のそれに近くなり、食事を作る、身を寄せる、ついに主人公を刺して無理やりキスをするなど立場が逆転してしまう。
さらにいつでも一日が終了を選べたはずなのに 特定の日付では アゲハからの食事とスキンシップを受けなければ勝手に終了できなくなくなってしまう。

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また作者であるRay-K氏は以下のような発言もしている。
 「Feed」は動物などに対するエサやりを意味する言葉だ。
アゲハから主人公への食事もまた「エサやり」のままだということだ。
つまり自分に向けられた一方的な愛をアゲハもまた一方的な愛で投げ返したということだ。
 

あくまで「一方的」を望むアゲハ

最後にアゲハに見せずに書いていたノートに突然書かれた「愛して」をみた主人公がアゲハの存在を認めるかどうかで分岐する。
 
アゲハを受け入れればHappyEnd A。お互いに笑顔のままで終わり。
認めなければHappyEnd B。主人公はアゲハに刺されて目が覚めると、これまでのアゲハに対する考えを改めて不自然に猛省する。 
 
興味深いのはHappyEnd Bだ。アゲハは刺す直後に悲しいような呆れたような表情をする。
ほぼ洗脳とも言えるような能力を持っているように見えるが初めからこの毒を使わなかったということは主人公の愛を尊重したかったということかもしれない。
あるいは「愛して」のと書く通りあくまで受け身の存在でありたかったということも考えられる。

いずれにしても主人公が注いだ形の愛をアゲハが理解している以上は無責任なままには終われないのだ。 
それは犬に顔を舐められるという程度では済まなかったのだ。

まさしく人が虫や爬虫類に対する愛を人に向けるというのを問うゲームだと言える。おそらくその後も二人は話し合うことなく愛のドッジボールを繰り返しているだろうと思われる。 

本作は小粒ながらも興味深いテーマを取り扱ったADVと言えるだろう。
特に奴隷との生活で伝家の宝刀とも言える「撫でる」の表現を大きく変えている点が素晴らしい。
この時点で完結しているものの、大変えっちになるであろう有料版公開など今後の内容にも期待したい。
 

2018年:みぞおちにインパクトが残ったゲーム5本

2018年、ゲーム業界として記念すべき年となるだろう。
年始のVTuberの爆発的なブームに伴いアダルトゲームのコイカツ、カスタムメイドがVカツ、カスタムキャストとしてVTuberアバター作成アプリを公開。
スパイダーマンから始まったCoD BO4やHITMAN2にFallout 76、RDR2などPS4秋のA級タイトルラッシュ。
そしてトドメのスマブラ新作発売とゲーマーにとって目が回るような一年を過ごすこととなったと思う。
 
そんななか今年特に印象に残ったゲーム5本に賞をとっつけて紹介したい。
完全に趣味でチョイスしたから「○○が入っていない。やりなおし」は一切受け付けないからな!
 
 

2018 ゲームブンセキベストゲーム賞

Celeste

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トゲだらけの山、「Celeste 」をひたすらを登る高難易度プラットフォームゲーム
このゲームの存在を知った時の感想は「まあまあ面白そうだな」という程度だった。
 
インディーで高難易度2DACTというとSuper Meat BoyとかN++とか
エリィのアクションとか大体それらの延長だろうなという予想があったからだ。
シンプルにゴールを目指すことが目的でありストーリーのウェイトは小さく作られている。
ガールフレンドを救う、盗まれた食べ物を取り返すなど
目的はそこまで気にかける必要がなかった。
 
Celesteも山頂をひたすら目指すという点でプレイのシンプルさは同じだが
困難のなかで露わになる内なる葛藤や弱さを受け入れるというドラマが展開される。
 
ステージの難易度は簡単ではないが
「あそこでああすりゃ行けた!」と思わせる絶妙な設計になっている。
 
このストーリーと達成感が滲み出るステージがプレイヤーと主人公の一体感を生んでいる。
この一体感こそ長く続くプラットフォームゲームの歴史のなかで本作が新たに踏みしめた新雪だ。
 
2018年The Game AwardsでGOTYにノミネートされRDR2やMHWと肩を並べ、
God of Warにその座を譲ったものの、十分GOTYとして渡り合える体験を提供してくれたと思う。
 
 
ゲームをすること自体が挑戦の連続だ。
それなら「挑戦する価値があった」胸を張ってと言いたい。
その気持ちにCelesteは限りなく答えてくれるだろう。
 

Switch移植ミスマッチ賞

白衣性愛情依存症

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1916年創業の工画堂スタジオ、しまりすさんちーむによる看護学校百合ADV。
 
もともとPS VitaとSteamでプレイできたが今年になってSwitchに移植された。
 
Twitterで#NintendoSwitchのタグで本作の衝撃的なキャプを見てつい購入した。
Switchも多様なゲームが移植されるようになり、DOOMやらDARK SOULSやら遊べるようになったが本作が一番驚いた。
なにせ一通り終わった後CERO C(15才以上対象)のマークを二度見したほどだ。
 
本作の百合は世間でごく自然にありふれたものとして扱われている。
しかし攻略対象ヒロインは妹、カップルとその相手、担任の先生と四方から禁断の恋に囲まれている。
全体的な雰囲気はしっかり看護学生の苦悩を描いているが、超能力、刺殺、失禁、SM死体婚カニバリズムと要所やオチはたいへん過激だ。
平穏の裏に不穏さが絶妙に見え隠れしていて飽きずにぐいぐい進められた。
 
なにかと目を覆われがちなバッドエンドがある本作だが
各ヒロインの願望や個性が強く出ていて個人的にはグッドエンドよりすごく好き。
 
ミスマッチ賞といいつつSwitchの本体モニターは他の携帯機より字が読みやすく、コントローラは軽いためADVを遊ぶのにうってつけのハードだったりする。
 
 

ファクション賞

My Child Lebensborn 

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本作のプラットフォームはiOSAndroid
アクション要素のないADVなので移動中でもプレイしやすい。
 
時は第二次世界大戦後。ナチスは理想の人種であるアーリア人を増やすべくドイツ兵とノルウェー人などの北方人種の混血を出産する支援施設レーベンスボルンを設立する。
しかし戦後レーベンスボルンで生まれた子供はナチズムの有無にかかわらず差別の対象となってしまう。
 
そんな中ノルウェーに住む主人公は孤児院からレーベンスボルンで生まれた子を引き取り学校へ通わせるところから始まる。
 
操作は簡単でわが子に食事を与え、学校まで送り、お風呂にいれて寝かしつけるだけだ。
しかしノルウェーにおけるレーベンスボルンへの差別は強烈でわが子は周囲のあらゆる人にいじめられて傷つく。そのうえあらゆる情報は基本的に子供を通して伝えられるため誰を信用すべきか、何が正しいかの不安が絶えない。
 
「どうしてこんなことされるの?」という至極当然の疑問に現実を教えるべきか希望を持たせるべきか選択肢を常に悩まされることとなる。
 
わが子がどんな目に合おうとプレイヤーを含め周囲の人にどれほど裏切られても生きている限り明日は続く。
 
日々の新聞やプレイヤーの書く日記から当時のノルウェーやレーベンスボルンについての知識から本作が真剣にレーベンスボルン、差別について真剣に向き合い伝えようとした作品であることがわかる。
 
それは本作のわが子の痛みをもってプレイヤーに残ることだろう。
 
 

深海のごとく深いで賞

Splatoon 2  OctoExpansion

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かつて戦争道具であった剣や弓、銃がスポーツや武道となったように

Splatoonの世界においてもブキを用いたナワバリバトルは戦争のルールからスポーツとなった経緯がある。しかしその戦争によってタコは居場所を追われ電力を賄えずイカから奪うという現状が今も続いている。
 
OctoExpansionは一人用キャンペーンをクリアするとタコが使えるようになる
というよくあるDLCに見えてイカにとって不倶戴天の敵であったタコが共存し得るかを問うストーリーでもある。
 
オシャレとバトルの世界、ハイカスクウェアを目指すタコの8号。
一度は襲ってきたもののシオカラ節に敬意を払うタコを認める元兵士のアタリメ司令。
イカへの攻撃に加担していたことを隠すイイダとそれを知らずにいたが受け入れるヒメ。
 
互いの違いを尊重し合うなか、優秀なタコ、イカの違いを無視して洗脳することで平和を目指すタルタル総帥。
 
タルタル総帥の目指す洗脳があれば8号は二度と他のイカに攻撃されることはないかもしれない。
しかし8号は自分を認めてくれた憧れのイカの世界、ハイカスクウェアを守るべく戦争としてのナワバリバトルに挑む。
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より詳細な考察はこちらの記事が非常に参考になる。
 
ピクミンポケモンBWもそうだがかわいいビジュアルで
強烈な設定、ストーリーを展開するギャップがなんとも任天堂らしい。
 
エイトボールやインク節約など厄介なステージもあったが
DLCは他に代え難いインパクトがあった。
無事ハイカスクウェアに降り立ったタコはただのアバターではなくまさに8号自身がそこにいた。
 
 

念願のリメイクがきたで賞

新説魔法少女

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PCのSRPGフリーゲーム魔法少女」がSRPGツクール95からSRPGSTUDIOに変わりグラフィック、UIを一新。さらに新キャラ一人追加でリメイクされた。
前作公開時点の2013年時点でも画質と操作に難があったため、やや勧めにくいところがあったがこれですべて解消された。
 
突如として現れた怪物と戦うべく、女子中学生たち(一部男子や女子小学生など)がマジカロイドとよばれる戦士に変身して戦う。
魔法のチカラで悪を滅して全て解決!ではなく、油断すれば普通に死人がでるしストーリーによっては仲間もしんどくなって欠勤したりもする。

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主人公はゲーム冒頭でいじめの飛び火が幼馴染にいったことにブチ切れて5人病院送りにして休学する超問題児。
そんなヤツに素手で岩を砕く力を与えたもんだからもう大変だ。
ほかの25人の戦士もみな曲者ぞろいで憂鬱な場面ばかりではなくドタバタ群像劇が楽しめるのも本作の魅力だ。
 
戦闘は自ターンに攻撃すれば相手の反撃を半減できるという
システムのおかげでガンガン攻めて特技を打ち込むのが楽しい。
しかし進めすぎると囲まれるリスクがあるため
誰をどの程度進めるか考えるのが今作のキモだ。
 
私はすでにリメイク前をプレイしてシナリオはわかっていたのに
本作をやって終盤に泣いてしまった。
時が経っても色褪せない作品の一つとしてぜひプレイしてほしい一作。
 

総括

敵をなぎ倒すゲームも楽しいが主人公や味方を通して痛みや苦しみを伝えるゲームがここ何年かで注目を集めている印象がある。
私も伝説の勇者よりは味方やヒロインがダメなヤツほど面白いんじゃないかとさえ思ってきてる。
映画や漫画と違ってプレイヤーがゲームに干渉するという特性が生む独特な共感は作品の独自性にもなる。
2019年もSEKIROやDMC5とすでに目が離せないがまだ見ぬ新規IPやインディーゲームについてもいい意味で油断ならなくなった。
そんなわけでちと早いけど2019年もゲームブンセキをよろしくお願いします。
 
 
 

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ベストインタラクティブメディア賞

DokiDokiLiteratureClub!

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ガチ鬱描写、ゴア表現、ジャンプスケアのトライアタックを
メタ表現でプレイヤーにぶつけて
背筋を凍らせ、
心臓麻痺させ、
叫んだ喉を焼いた凶悪なゲーム。
 
どれか2つまでなら結構見かけるがそこまでやるかフツー…
 
ストーリーはとにかく救いがないしヒロインはなにをやっても自殺する。
そしてプレイヤーが最後に残された選択は全てを捨ててプレイヤーに告白したモニカを削除することだけ。
もういろんな意味でゲームの一線超えた存在なのでコイツは
「ゲーム」の枠から外してベストインタラクティブメディア賞としておきたい。
させてくれ。
 
メタフィクションならOneshotやUndertale も有名だがとにかくDDLCは「現実のプレイヤー」に容赦がない。
それゆえヒロインたちの訴えは痛烈であり、ゲームキャラと現実の人間が愛を伝えることについて真っ向から向き合ったギャルゲーといえる。
実際ホラー分抜きにしてもシナリオは結構面白いしキャラには妙な人間性がある。
この世界に希望も幸せもないけどそれを追い求めた彼女たちの意思はどこまでもプレイヤーに残ることだろう。
 
たった3時間ほどのプレイ時間だがどれほどの言葉を使っても語り尽くせてない。
おかげで今年のTwitterの発言のほとんどはDDLC関連になってしまった。
おそらく今後も一生語っているだろう。
 
Just Monika. 
 
 
 
 

FAガール:グライフェンをゲームオタクが語る

RDR2が終わりません。ゲームオタクのウィキダです。
コトブキヤから発売されているプラモデル、
フレームアームズ・ガールシリーズ(以下FAガール)の
グライフェンがめちゃエr…かわいくて仕方がない。
それもただかわいいだけではない。
 
このデザインの素晴らしさはマリオであり、MGSであると感じたのだ。
 
すなわちキャラクターデザインの素晴らしさが
ゲームのデザインに通ずるものがあるということだ。
 
そんなわけでこの記事を通してグライフェンの魅力とともに
ゲームキャラクターの特徴や表現について伝えたい。
 

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フレームアームズ・ガールとは

FAガールとはコトブキヤのオリジナルロボットのプラモデル、
フレームアームズ」がガールになったというもの。まんまだな。
元のフレームアームズにはいくらかバックストーリーが存在するが
FAガールには一切ないので「カワイイ!」と思っただけで即、買っていい。
(一応オリジナルのストーリーで2017年4月にアニメ化されている)
 
制作もニッパーとデカール貼りのためのピンセット、あとは焦らない気持ちがあれば
塗装しなくてもかなり満足感のある出来栄えになる。
グライフェンにいたってはデカール貼りすら不要だ。
 
話をグライフェンのキャラデザに戻そう。
彼女は飾ったり、アクションするときに特に目立つ特徴を持っている。
大きな手袋をはめていることと指の可動する副腕を持っていることだ。

○マリオやロックマンのように手袋が大きい

かの宮本茂氏がマリオをデザインするとき、
腕を振る動きがわかりやすくなるようにオーバーオールを着せ、
手袋をはめたことは有名な話だ。
 
「オーバーオールを着ている理由」
 
マリオ以前からパックマンが手袋をしている。
さらに2DACTで有名なロックマンソニックも大きな手袋をしている。
 
彼らはドットという制約のなかでより動きを強調するデフォルメをした結果、
手足が丸く大きくなったのだ。
 

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FAガールはだいたい1/12スケール。グライフェンの身長は16cmほど。
figmaなどと同じようなスケール感だ。
 
このぐらいのフィギュアやプラモデルは手にとってまじまじと見ているうちは
あまりスケールの小ささは気にならないものだが
棚や机の上にしばらく置いてから見返すと手足が針のように細く感じてしまう。
 
一方グライフェンは末広がりの袖に大きな手袋をはめているため、
そうしたギャップが上手く抑えられている。
ポーズをキメて飾ってからも変わらぬ印象を持たせられるのだ。
(加えて豊満なボディもその後押しになっている) 

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右のキャラは素体の手足に差し替えた。手足が黒いのもあるがパッと見の印象が違うのがわかると思う。
ドットから始まりあらゆるハードで活躍したキャラデザはプラモデルという様々なシチュエーションで観賞されるホビーにも通用するのである。

○ 大きなアームと指で表情を表現できる。

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グライフェンの特徴的な装備である副腕はそのままパンチさせたり、
武器をもたせるだけでかなり楽しめる。
しかし指を自由に可動させることでさまざまなジャスチャーや
表情をもたせることができる。
 
表情というと顔の動きを考えがちだがポージングによっても幅広い表現ができる。
PSの初代MGSは顔のテクスチャによって表情をかえることがほとんど出来なかった。
そのかわりポージングやジェスチャーによって多彩な表現を行っている。

 

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「念力」によってコントローラーを動かそうとするマスクの男、サイコ・マンティス。ポーズによってマスク越しの気合が伝わる。
余談だがMGSのキャラデザである新川洋司氏が手かげた
デカパイFAガール「白虎」が存在する。
(メカ部分、ガール部分ともに 新川洋司氏)
 
また Dead Cellsの主人公は頭のない囚人に乗り移る火の玉なのだが、
彼は顔がないので表情と声がない。
その分彼はオーバーなジェスチャーでフランクな性格をアピールしている。

 

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グライフェンの表情は笑っている顔しかないが大きな副腕と
その指でサムズアップやピースなどができる。
 
これらを組み合わせると様々な表現が可能になる。

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せっかく可動するプラモデルとしては多様なシチュエーションを作ったり
思い描いたキャラの個性を引き出したりしたくなるものである。
とくに指が可動するというのは大きな利点となるだろう。
 
 これらの点からグライフェンは様々遊び方と豊かな表現が可能だ。
 
その遊び心を机に置いて離れて見てもグライフェンは
イキイキとした存在感を放つだろう。
 
 
いかがだろうか。ゲームにおいて制約があるゆえに生まれる表現は
現実のプラモデルにとっても非常に有効だと考えている。
 
グライフェンのデザインをした木下氏がゲームのキャラデザイン
を参考にしたわけではなく偶然も多分にあると思う
 
しかしゲームの表現が他の分野においても通用しえるものがあると感じてもらえたと思う。
 
この記事がもし自分が気に入ったキャラクターなどを語るうえでなにかのきっかけになれば幸いだ。