ゲームブンセキ

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Transistor :ビジュアル、サウンド、戦闘による「間力」を持った美しいARPG

クォータービューによる変態的なまでの美しいビジュアルにエレクトロとジャズをあわせたBGMが印象的なARPGがTransisterだ。
 

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ストーリーは体をTransistorという剣にされた男と声を失った女性歌手の主人公たちが自分たちの住む街、クラウドバンクを破壊してしている悪と謎を追って戦う。
 
移動中もTransistorが街の惨状に憤ったり、街に対する思い出話をしてくれるが実際の光景を想像してしまうほど景色が美しい。
 
音楽の演出もきわめて興味深く、私が最も再生したゲームサントラになった。
 
進行はほぼ一歩道でひたすら道を歩き敵が現れれば倒すという流れを繰り返す。
本作はあまり明確にステージが区切られておらず、ボスらしい敵もわずかで大部分が雑魚戦だが不思議と単調さを感じさせない。
 
このゲームは戦闘と移動の間が巧みにコントロールされているのだ。具体的な流れを挙げていこう。
 
 

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ある細い道を歩くとドラムだけが流れ広場にたどり着く。
中心に近づくと音楽が途切れずメロディが加わり、四方から敵が現れ戦闘になる。敵を倒しても音楽が続き別の広場でまたすぐ戦闘になる。
 
一段大きな戦闘を終え音楽は静かな環境音に代わる。一息つきながら進んだ先の建物を調べるとTransistorはゆっくりと街の思い出を語る。
そして悪役の謎や目的の考察を聞きながら次のエリアへの道を歩く。
 
といった具合だ。
ステージ構成や音楽の演出などで非言語的に展開を予感させるスタイルは本作の退廃的な雰囲気と相まって素晴らしい。
 
戦闘も緊張感を生み出すのに大きな役目を持っている。
敵は動きが早く正確に攻撃してくる上にダメージを受けても無敵にならないので囲まれるとすぐに蜂の巣になる。
 
そこでTurn()と呼ばれる能力を使うと敵の動きが一時的に止まりこちらの移動と技が予約したのち超高速で放てる。
 
予約した技によるダメージは計算され、ミスしてもやり直せるのでじっくりとコンボなどを考えたうえで確実に仕留めることができる。
 
 

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このシステムによって「ゴリ押しで勝った」とか「イケると思ったに負けた」といった乖離を抑える。
大暴れしてスッキリしたあとに呼吸を整えながらみる色とりどり街灯は勝利の余韻を心地よいものにする。
 
本作の開発会社Supergiant のスタッフKasavin 氏はTurn()の着想についてこう語っている
 
 
 
「Bastion のアーケード的な体験とは逆に、もっと緩急のあるプレイを実現したくなったんだ。アートディレクターの Jen 氏はそれを踏まえて、世界観のコンセプトをすぐにビジュアル化してくれた。皆それを見て燃えたよ。プレイの面でも、リアルタイム戦闘と戦略的な思考をシームレスに結ぶ方法を見つけることができたんだ」
 
 
Transistorが美しいのはワケがある。
本作は背景や音楽の鑑賞自体が目的の雰囲気ゲーではなく、ARPGの手に汗握る戦いの舞台としてそのビジュアルの完成度を「間」によって結びつけている。
EDまでプレイし終わってサウンドトラックを聞き返す時、君のまぶたの裏にクラウドバンクが浮かんでいることだろう。